この物語はフィクションです。といってみるテ ス ト

その日は恩師の引退の日だった。
その人は小学生の頃からお世話になっていて、僕の人格矯正に一役買った人である。
ひねくれてすかしていたガキだった僕に、そんな斜めからばっかり見てたら人生損するよ、と言ってくれた最初の人だった。生意気な子どもは当然そんな言葉をまるっきり信じたわけではなかったが、日々の生活の節々でその言葉を思い返しその度に自分自身を見つめなおしたものである。
先生は60を超えるご高齢にもかかわらず、子どものような純真さとエネルギーをもった人だった。
何をするときにも先頭に立って場を盛り上げていた。その上周りを気にかける余裕も持ち合わせた、子どもだった僕にとって一番分かりやすい『大人』だった。
そんな先生も引退すると聞いて、時の流れを感じたものである。
閑話休題ていうか本題が始まってねぇよ('A`)
引退のパーティーということで、現役の子はもちろん、40才を超えるOB,OGの方々も集まっていた。僕にとって懐かしい面子もちらほら。
みんなが思い出話に花を咲かせる中、現役の子がたどたどしい口調で式の始まりを告げた。
会は順調に進んでいった。引退式といっても中身は普段やっていることと変わらない。テーマ活動と呼ばれる劇をメインに手遊びやら歌やら。受験に入るときに引退した僕には懐かしいものだった。
そのなか、引退式ということで先生に一言ずつ挨拶をする機会があった。
OB、OGが思い出を語っていく、微笑ましいエピソードや感謝したことなど。様々な言葉が先生に贈られた。なかには感極まって泣き出す人もいた。
当然僕にも順番が回ってきた。言う言葉を待っている間考えていたりしたのだが、先生の前に出ると言葉がでなかった。何を言えばいいか、どんな顔をすればいいか。数秒だったか数十秒だったか、先生は何もいえないでいる僕をみてただ微笑むだけだった。いつもあがって言葉が出ない僕を知ってるが故のその表情だった。その顔を見て僕は、どれだけ言葉を尽くしてもどれだけ時間をかけたとしても、この人には感謝し足りないだろうな、と思った。
そう思った僕は、思ったままを口にすることにした。先生が僕に言ってくれた言葉、僕にしてくれた行為。それを受けて僕がどれだけ感謝したか、どれだけ影響を受けたか。言葉はつたなかったが先生はその一言一言を笑顔で受け止めてくれた。僕はそれだけで満足だった。
フィク ションだかんねっ!!
その場もつつがなく終わり、しんみりした空気もどこへやら、場は貸しきりの居酒屋へと移動した。
先生の音頭で飲み会が始まった。やっと本題…。
場は、先生を中心とした大人組、僕ら大学生を中心とした若い奴ら、高校生以下のがきんちょにわかれた。
僕は最初特に動くことも無くのんびり飲んでいたのだが、そこに集まっているのは青春を謳歌する大学生。僕みたいなプチひきこもりヲタにはついていけない雰囲気。かろうじて対面にはオタク(♂)が座っていてそいつと話すのも楽しくないわけではなかったが、なんでこの盛り上がってる中で男二人でヲタトークをしなきゃならんのか、と思い、いそいそと青春真っ盛りな人たちの輪から抜け出した。
その後なぜが♂友達の親父と語り合ったりOB夫婦と語り合ったりした後、がきんちょどもが暇そうにしている中に。
当然奴らは酒が飲めないわけで、大人たちが盛り上がっているの尻目になんかぐでぐでしていた。
酒入りテンションの僕はその場に突入。
なんか無駄に酔っ払いをアピールして笑われたり、意味もなく隣のおじさまにお酌をして返杯されて吐きそうになってたりw
ぐでぐでで楽しんでると、女の子たちが(男の子の)誰がキモイとか(もちろん冗談で)いいだした。
小学生はそういうの意味もなく好きだねー、とか思っていると、何故か僕まで標的にww
そんな中微妙に僕を擁護するような女の子がいて(ちっこいろりっこ、むねぺったんこ)、誰かが、Aちゃん小姓のことすきなんじゃないのー?とか言い出した。
Aは僕の顔をちらちら見ながら困った様子でいたのだが、その様子にさっきの子が、けっこんしちゃいなよー、と更にはやし立てて来た。さらに困った顔をしたAが何か言おうと口を開いたとき
「結婚してくださいっ!!」
僕はいきなりそういった。特になにを考えていたでもなく思わず口をついてそんな言葉が出ていた。
彼女は大きく目を見開き、顔を赤くして俯いてしまった。そりゃそうだ、こんな所でいきなりプロポーズされて冷静でいられるはずも無い。ぼくはそれでもかまわず、真剣な顔で彼女を見つめた。
すると横から
「小姓酔ってるよー」
と思いっきり小突かれた。それでみんなに笑いが起き、その話はそれっきりになった。
そんなこんなで時間は過ぎ、お開きの時間になった。
彼女はみんなに手を振りながら笑顔でお別れした。僕にも視線を向け、普通に手を振って別れた。


先生というつながりが切れてしまった今、もう彼女に会うことは無いのかと思うと少し悲しくなった。おっきくなった時を密かに楽しみにしてたのにww